ペットは人間と同じ生活をしているので別にして、自然に住む動物にむし歯はありません。もしも歯が無くなったら“死”を意味します。年齢の「齢」という字にも歯が使われています。昔の人は経験から歯の大切さは実感していたようです。
人間も動物ですから歯を無視して健康を考えることは出来ませんね。口は人間の身体の一部であり、他の身体とつながっています。
医科には多くの科目があるのに、なぜ歯科は独立しているのでしょうか? 歯科が重要で無いのではなく、逆に歯科は特殊で専門的に考えなくてはならないほど重要な科目だからなのです。
前歯は顔面の構成上重要で顔立ちの美しさに影響し、発音にも関係しています。もちろん食物をかみ切る役目もしています。奥歯は臼歯とも言われ、食物をすりつぶす役目をし大きな力を受け止めています。
8020(ハチマルニイマル)運動
8020(ハチマルニイマル)運動というのをご存じでしょうか?「食べる楽しみ」とは、人生で一番だと思う方はとても多いのでは無いでしょうか?
80歳になった時、親知らずを除く28本の歯のうち、20本以上自分の歯があれば、ほとんどの食物をかみくだくことができ、おいしく食べられるところから、20本以上の歯を保つことを目標としているものです。
80歳で20本以上の歯をもつ方と、そうでない方を比較すると、身体全体の健康状態にも差があり、現在その研究が進められています。
QOL(クオリティー・オブ・ライフ)
QOL(クオリティー・オブ・ライフ)とは生活の質の意味、口や歯の健康はQOLに欠かせません。
「健康日本21」 歯の健康目標値
歯の喪失防止の目標(1)
80歳における20歳以上の自分のはを有する者の割合及び60歳における24歯以上の自分の歯を有数る者割合の増加
| 80歳で20歯以上保有 | 目標値:20%以上 (基準値:75~84歳で20歯以上有する者 11.5%) |
|---|---|
| 60歳で24歯以上保有 | 目標値:50%以上 (基準値:55~64歳で24歯以上有する者 44.1%) |
出典: H5年歯科疾患実態調査
歯を失う原因の約9割がむし歯と歯槽膿漏(歯周病)!その原因はバイ菌(細菌)!
むし歯や歯周病は全身の健康に大きく影響することをご存じですか?
歯垢(しこう、デンタルプラークともいいます)はバイ菌(細菌)のかたまりで耳かき1杯(1mg)に数億匹のバイ菌がいます。また、歯垢を放置すると歯石(しせき)というハブラシでは取れない硬い状態になってしまいます。
唾液(つば)はバイ菌を殺してくれます。いわば口の掃除屋さんです。寝ている時はその出る量が少なくなるため、歯にとってはとても危険な状態になってしまいます。夜寝る前に歯を磨くのが効果的というのはその意味があります。
しかし、唾液のバイ菌を殺せる能力にも限界があります。現代のように自然界よりもはるかに多い栄養を取っていると、バイ菌もそれらを食べ唾液で殺せる以上に増えてしまいます。だから、歯磨きでバイ菌を少なくするのです。
歯磨きには歯ブラシだけでなく歯間清掃も必要です。デンタルフロス(糸ようじ)、必要に応じて歯間ブラシなどで行います。しかし、完璧にきれいにすることは難しいのが現実です。
歯磨きをしていない人はほとんどいないのにむし歯や歯槽膿漏になってしまうのはそれが原因です。
かかりつけの歯科医院をもち、定期健診や定期管理(メインテナンス)で健康状態のチェックを行うと同時に歯磨き指導や歯ブラシでは取れない歯垢の除去(クリーニング)や歯石取りをすることをお勧めします。歯石取りは健康保険で行えます。
また、つめ物やかぶせ物、入れ歯も使用しているうちに劣化したり合わなくなります。 放置すると合わなくなった所からバイ菌が歯の中に入りむし歯の再発が起きます。
小さい詰め物が再治療のたびに大きくなり、神経を取ったりかぶせることが良くあります。 神経を失った歯は栄養が来なくなり枯れ木のように弱くなります。
やがて抜歯が必要となり、1本の歯が失われるとその負担が他の歯にかかることとなり、最終的には全ての歯が無くなる事にもつながります。
入れ歯も合わないで使っていると土手である歯ぐきがやせる原因にもなります。歯ぐきが極端にやせると顎の骨折を招いたり、入れ歯も具合の良い物が出来にくくなります。
かむ力は自分の体重と同じくらいで1日に何千回も咬んでいます。 歯は絶えず使う物ですから一生もつ詰め物、かぶせ物、入れ歯はありません。
かかりつけの歯科医院をもち、定期的にチェックし、調整してもらったり、詰め直してもらったりする必要があります。これらも健康保険で行えます。
むし歯とは?
食べ物の中にはほとんどにバイ菌の“えさ”である砂糖が含まれています。取りすぎはいけませんが、砂糖は人間に必要な栄養素です。ところが、食べた物に含まれる砂糖を口の中にいるバイ菌(むし歯の原因の細菌)が食べると“酸”という物を作り歯を溶かします。
つまり、食べていると口の中は酸性となり、歯は溶けているのです。でも大丈夫!食事と食事の間につば(唾液)に含まれる成分で元に戻るのです。
しかし、食事の回数が多かったり、砂糖を含むアメをナメ続けたり、口の中が不潔であったり食べ物が残っていると口の中は歯の溶ける酸性状態が続き、回復する時間が不十分となり、最終的には歯に穴があく“むし歯”となってしまいます。
歯は一度穴があいてしまうと決して元には戻りません。自己治癒能力が無いのです。胃に穴が空くと「胃潰瘍」、その前が「胃炎」ですが、健康保険では胃潰瘍、胃炎ともに健康保険が使えます。何度も起こる“風邪”でも健康保険が使えます。
しかし、歯の場合、穴の空く前の状態では健康保険が使えません。自己治癒能力がある胃に使えて、それが無い歯に使えないのは変な話なのですが…。
むし歯とは歯に穴が空いた状態ですが、実はその前の状態があり、適切な処置や指導を受けるとむし歯にならないようにする事ができます。本来なら、健康ではなくむし歯になりそうな状態の歯に対しても健康保険を使うことが出来たらと思っている歯科医師が多いことは理解していただきたいと思います。
しかし、むし歯かな?と思って歯医者に行き、診査をしてもらい、適切なアドバイスを受けることは健康保険でも可能ですので不安な方は歯科へ受診して下さい。全ての人が同じ歯の形や歯並びではなく、必要な歯磨きの仕方も違いますので、自分にあった方法を教えてもらうことが必要です。
フッ素の効果
(フッ素使用のすすめ)
なぜフッ素がいいの?
フッ素は適度な濃度で用いると、むし歯になりにくい強い歯質にしたり、歯が溶けそうな状態つまりむし歯になる状態をおさえる効果がわかっています。
少しむずかしくなりますが、歯は骨と同じハイドロキシアパタイトとよばれる結晶から作られており、おもにカルシウムとリンで作られています。歯を強くするためにカルシウムが必要と言われるのはそのためです。
しかし歯の結晶の中には不純物や弱く不安定な所があり、そこにフッ素が結びつくとむし歯になりにくい強い状態となるのです。子供の時、特にはえたての歯は注意が必要です。はえたての歯の表面は穴だらけの“軽石”の様な状態でむし歯にもなりやすいのですがフッ素も吸収しやすい状態です。
はえた部分が“唾液(だえき)”に含まれるカルシウムやフッ素を取り込んで強くなるか、将来むし歯になりやすい弱い状態になるかは歯がはえてから2~3ヶ月で決まってしまうと言われています。
残念ながら歯はゆっくりはえてきますので、歯がはえている間(乳歯で6ヶ月位から3歳、永久歯で5歳から12歳位まで)は特に注意が必要です。フッ素は詰め物やかぶせた物のまわりから起こるむし歯の再発を抑える効果もあります。
食べるたびに歯は溶けますのでフッ素は子供だけでなく、大人にとっても必要で効果のある物です。幸い市販の歯みがき剤の80%近くにフッ素が入っています。低濃度のフッ素をふだん用い正しい歯磨きをするだけでもかなりの効果がありますが、年に数回歯科医院で高濃度のフッ素を塗ってもらうとより効果が上がることがわかっています。
子供が対象ですが、江戸川区では年に1回ですが、歯の衛生週間の時に無料で高濃度のフッ素塗布を行っています。是非ご利用下さい。しかし、フッ素だけですべてむし歯を防げるわけではありません。
適切な歯磨きもふくめ、かかりつけの歯医者さんで適切な指導を受ける事をお勧めします。残念ながらフッ素は歯の表面でなだらかな所には効果がありますが、歯の溝(みぞ)にはあまり効果がありません。
歯ブラシの毛先が届かないような溝(みぞ)がある場合には歯を削らずにそれをふさぐ方法(シーラント)もありますし、健康保険の対象になる場合もありますのでかかりつけの歯医者さんに相談して下さい。
フッ素の安全性、危険性?
| 土壌 | 300ppm以下 |
|---|---|
| 空気 | 0.02~2.00ppb |
| 水 | 0.01ppm前後 (地表水:0.05~0.2ppm、 地下水:0.1~1.0ppm) |
| 海水 | 1.3ppm |
| 注釈 | *ppm:100万分の1 (1%=10000ppm) **ppb:10億分の1 (1ppm=1000ppb) |
どんな物でも極端に取りすぎて良い物はありません。フッ素の毒性は致死量(CLD)32-64mg/kg、安全耐量(STD)8-16mg/kg、見込み中毒量(PTD)5mg/kgで、このうち見込み中毒量は実際の中毒例に基づいた中毒の兆候や症状を起こしうる量です。
例えば10kgの子供の場合一度に50mgのフッ素を取ると中毒を起こし適切な治療が必要となる可能性が高い事を示します。(60kgの大人なら300mg)急性経口中毒の症状は悪心、嘔吐、唾液分泌過多、腹痛、下痢、けいれん、心不整脈、昏睡などです。
ところで、むし歯予防効果のあるフッ素製剤である歯磨き粉やスプレーなどにはどの位フッ素が入っているのでしょうか?市販のフッ素製剤は1000ppm以下ですが、仮にその1000ppmの場合で1g(=1ml)に含まれるフッ素量は1mgとなります。歯磨き粉の場合洗口した後に残るフッ素量は15%程度ですし、スプレーでも100mlで数ヶ月分なので1日分にしたら極少量なのがわかると思います。
それでむし歯をかなり予防できるのですから安心して使える効果の高いものであることがわかりますよね!フッ素は体に含まれる14番目に多い必須元素で、自然界でもありとあらゆる所に存在するものなのです。
昔は天然の井戸水を飲んでいましたが、当然その中にフッ素は含まれています。しかし、現在普通の水道水にフッ素は入っていません。天然水が身体に良いことはご存じだと思いますが、それに含まれるミネラルの中でもフッ素は入っているのです。